2016年11月2日水曜日

【試作小説】次は四駆と何処に行く?part5 <第三章・小型と中型 後編 篇>

<一口メモ>
猫背が悪化しました。

・・・・・

「おかえり!惜しかったね、...でも、これでとりあえず1台は小型車クラスでのアジア行きは決定ね!一緒にガンバロ!」

小型車部門が終わるとの同時にサービスパークに帰ってきた泥だらけの長崎を千歳は笑顔で迎えた。しかしシュンとした長崎の傍らにはシエラの姿はない。


「バシャン! ズザザザァ...」」」

大きく水しぶきを上げた。車体の2倍程はある水しぶきだ。勿論周りで見ている観客及び生徒にもその飛沫は飛ぶ。

「オイ!あんな入り方したら駄目だろ。」

他校の生徒がそう叫ぶ。しかし長崎は速度を緩めさせようとしない。ただただ、アクセルを踏み続ける。車体は彼に従って前へ前へと進む。奇跡的にエンジンブローは免れた。しかし、池から上がってきたシエラはグリルの破損やナンバーの捲り上がりは勿論、バンパーまでもがひしゃげ、如何に水の力が分かるものだ。

マッドステージの中間に差し掛かる頃には理性を失い、本能だけが頼りのような状態になっていた。悲しいかな?そのような状態になった人間には神や佛は決して幸ではなく、不幸というものを下す。もし神や佛というものが存在しなかったとしても、理性を失った人間は不幸が必然的に降りかかるものなのである。

「ガツン!」

デフ玉が泥に埋もれ見えない岩に当たり、前進できない。しかし今の長崎に後退などという言葉はない。どんな壁はあったって突破する事だけが戦法としてあるだけなのである。ただ、一向に車体は沈んでゆく、、、銀の塗装面は完全に埋もれ、次第に冷却水の温度も上がる。

『14番、ジムニーシエラ 走行不能』

会場内に仮設スピーカーの音が響く。
その後、ボロボロになった車体は他校の車に引っ張られ泥から抜け出した。ナンバーは勿論のこと、バンパー諸共ひしゃげ、グリルにはヒビが入っている。車体は如何に泥に深く入ったかが分かる。今まで、この部に入部し、資格を取り、思い出をつくってきた長崎には受け入れ難き光景であった___


「あっ。これ、インスタントですよ。簡単です。」

と、咲は巣鴨を見上げる。一瞬上目遣いになり、ジャージを着ない体育着姿だっったものだから、服の間から少し胸元が見え巣鴨はすこし顔を赤めそうになった。

「そうか、じゃあ逆に自分は迷惑かけるかもね。料理なんてロクにできたものじゃないからサ。後ででも良いんだけど俺は少しやることがあるから。」

と、少し咲と目線をそらしながら云う。

「あっ。そうですか。じゃあ由紀ちゃんと二人で作っときます。」

もう既に黙々と米を研いでいる京子を見、そう云った。

「じゃあ、宜しく。」

と云い銀雲の下に雑に停めてあるジープの方へと走っていった。それと入れ替わるように千歳と一年の二人が帰ってきた。千歳は料理を作っている咲と由紀に近づき云う。

「あれ?レトルトだったの?」

「そうです。因みにご飯もレトルトです。長崎先輩が帰ってくる前にはできます。多分。」

と、銀のパックが揺れているのを見ながら京子が答える。沸騰はしているがまだパックは入れて間もない。それから5分もするかしないうち___
巣鴨と駒込が今回のコースや天候について話し合っている頃、由紀が咲にどうやって沸騰している水からパックを取り出すのか分からなくて嘆いている頃、千歳が色々とこの部の過去の出来事等を一年の要と大塚に話している頃、仮設スピーカーの雑音が混じった声が鳴り響いた。一瞬場が静まる。しかし、千歳はすぐに少し笑ったような表情で口を開いた。

「多分池か泥でやらかしたんだろうな。長崎は本当に水に弱いから。まあ、後輩がいるから良いか。問題ない。」

「良くもそんなことが云えますね。先輩。結局自分達に全部のしかかるんですよ。先輩はもう出場確定な成績を残していますが僕たちにはそれがとても困難です。」

普段は目上、目下の人間とは話さない駒込が珍しく口を開いた。しかし、相変わらずの刺々しい口調で云うのは変わりない。

「それって、自分に自信がないって事?」

千歳も駒込と同じように刺の入った口調で反論する。それに対し、また反論である。

「勿論自信はあります。なければバックレてますよ。しかし、出場枠に入るのには元々の母体数が大きく困難であることは分かっていますよね。しかも俺の運転するランクルじゃスタックしたら一貫の終わりです。ジープならまだしも、ランクルじゃスタックしたらそこで終わりなんですよ...」

力を入れて駒込は云った。しかし千歳は冷静な表情を保ったまま云う。

「じゃあさっきのアナウンス、なんて言った?」

少し黙り込んだ駒込であったがにやりと表情を緩めた。

「あの人は下手なんですよ。先輩が云ったように。水辺じゃ下手なんですよ。」

「おい。貴様、先輩に対して、、、自分自身を助けてもらった相手に何云ってるんだよ。この無礼者!」

今まで冷静に二人のやり取りを聴いていた巣鴨が駒込の襟を掴む。それを見た周りの人達はそのまま凍りついたままだ。

「巣鴨君。その手を離しな。」

固まった空気がその凛とした声で動き出す。
渋々巣鴨は駒込の襟元から手を離した。

「じゃあ、その下手な先輩とやらに上手な君の走りを見せてあげなよ。」

「分かりました。ではそうしましょう。」

そう云うとランクルに乗り込みエンジンをかけた。横から声が聞こえる。

「どこに行く。まだ俺らが出るクラスにも回ってきていないし、昼飯もまだだろう。」

巣鴨の声だった。

「別にいーだろ。少し一人でいさせてくれ。飯は外で食う。」

少し遠くを見つめ云った。

「バックレるなよ。」

駒込は反応もせず、その場を立ち去った。巣鴨はそんな後ろ姿を唯唯立ち止まったまま見つめていた。そこに、「飯はどうした」と訊けずにいた咲が駆け寄って、

「あの...駒込先輩、要らないんですか?昼食。もし必要ならとっておきますが。」

と訊いた。

「いらないみたい。それより雨降り始めたから戻るぞ。濡れて風邪引くのは嫌だろ?」

と、急いで傍らにきた咲が手に持っていたしゃもじを見ながら答えた。

<休憩!>
今回の話では活躍は殆どありませんが、下の絵のキャラが主役の千早咲となる感じなので、そこら辺宜しくお願いします。


・・・・・

「雨だ」

一人、コンビニで買った最近崩れやすくなったと思っているおにぎりを食べながらディーゼル音のやかましいランドクルーザーの車内で呟く。しかしその声はあっという間に前方の音にかき消された。
駒込は独り考えていた。というよりは悩んでいた。千歳橋が何故あのような云い方をしたのか駒込自身、入学以来世話になっているだけあり分かるのである。しかしそこが彼の一番の問題であった。千歳橋の思惑に従うか背くか。それは本気を出すか出さないかの選択肢だ。ガラガラとしたディーゼル音が身体に響く。


「もうお腹いっぱい。」

そう云い咲はスプーンを置いた。

「咲ー、もうちょっと食べなきゃダメだよー。いつまでも背の順前の方だよ。」

由紀はスプーン片手に咲が持っている紙皿を見て云う。そう言われ咲は聞き飽きたような顔で

「私はこれでいいの。十分。お父さんの仕事が林業だからそんな贅沢してらんないっていうのもあるけど...今のところ健康だし、大丈夫。」

と云ったら由紀は響く声で

「それじゃダメだから私は云ってるの!自分は健康だと思っていても実はそうじゃなかったりするものなんだよ。咲ん家は咲がいなくちゃ駄目なんだから。ね?」

咲はあまり表情を変えず云う。

「心配してくれることが有難いけど、そんなマジになっていう事かな...?」

すると由紀がにこやかな顔で、

「じゃあ、ふざけていう?」

「あっ...」

咲は嫌な予感を察した。

「咲さん咲さん。食べないと、いつまでも貧乳のままですよっ?」

嫌味を込めた笑いだ。

「なんちゃってヘッドロック!!」

「グハっ!」

由紀の首に咲の腕がまとわりつく。周りの部員も注目する。

「ギブギブギブ!すみませんでしたのでギブ!」

首から手を解く。

「なんちゃってじゃないよコレ。マジだよ!本格的だよ!」

由紀が大声を出す。

「まあまあ、これが山の人間の娘の本気とは思ってもらっちゃあ困りますな。あと、何度も云ってるけど私はこれからだから!」

咲はさっきから呆れたような表情を変えない。

「咲ちゃんのお父さんって林業してるんだ。だから力あるし、この前車持ってこれますって云ったわけか。」

千歳が会話に入る。

「いや、林業と力関係ないですよ。ヘッドロックは由紀ちゃんが大袈裟なだけです。私は力、弱いほうです。でも、持久力は結構あるって云われますね。
車は私がこの部に入るって云ったら父が使い古したボロっちいのを貸してくれるそうです。」

咲が由紀の頭をぐるぐると回しながら云う。

「「ボロっちい云うな!!」」

長崎と巣鴨が同時に反応した。

「えっ、ああ。はい。でも本当にボロですよ。錆びてますし。エアコン無いですし。形古いですし。」

戸惑った様子で答える。それに対し巣鴨は、

「千早さん。エアコン無いのは俺が今日乗ってきたあの一番デッカイ車も同じだし、そこに停まってる化石みたいな車も同じ。錆は相当酷くない限り直せるから大丈夫。ボロくない。」

「そうなんですか...?」

「えっ!エアコン無いの!?私死ぬよ!?夏!」

いきなり由紀が反応した。

「大丈夫だよ。風は入るから。」

「信号待ちダメじゃん!」

「耐えればいい。」

「流石咲は持久力馬鹿だねー」

笑いながら云う。

「馬鹿余計。少なくともあんたよりは頭良い。」

「はははっ!それは云えそう!」

千歳が目を細くし笑う。

「先輩!?」

「冗談冗談。この高校、それなりには上のほうだったでしょ。」

「はい。結構勉強しましたよ。咲の1.5倍はしたと...」

「いやいや、3倍でしょ。」

咲が首を横に振る。

「さっきから咲、私にばっか酷くない!?何を闘おうとしてるの?」

「なんだろうねー」

棒読みな口調で返答した。食堂テントのザラザラとした生地に強く雨粒が打ち付ける音がする。

「...話戻るけどさ、貸してもらえる車って「ジムニー」って云ってたよね?」

千歳が話を戻す。

「はい。そうですけど。」

皿を重ねながら答えた。

「ん~、ジムニーっつたって色々あるんだよねー。先ず軽?普通車どっち?」

「確かナンバーが白なんで普通車だったと」

「形は四角い?それとも此処に来たとき乗ってきたような妙に丸っこい形?」

「カックカクです。」

「そっか。絞れたって云っても4車種はあるから難しいな。巣鴨君尋問変わってくれる?」

「尋問なんですか?これは!?」

咲は目を丸くした。

「あーこれ、先輩のジョークだから気にしないで。良いよ。」

咲は頷いた。

「まず、色は何色?」

「白です。」

「もう2つに絞れた。」

「車の前の網は縦に入ったやつ?それともネットみたいな感じ?」

「縦柄です。」

「よし!分かりました!1型か2型か分からないけど、これは明らかにスズキジムニーSJ40です!」

明るい声でいうものの、長崎がほうと頷くだけであった。

・・・・・・・・・・・・・・・
「結局先輩にそう云われ本気出すのがお前だよな。」

紺色の鉄板にもたれかかりながら半透明のレインコートを着た巣鴨は云った。エンジンの揺れが雨に強く打ち付けられている鉄板越しに身体に伝わる。

「まあな。それは認める。しかし、この道の状況じゃ、良い結果は出せそうにも無い。特に沼地はこの車にとっては最悪だ。」

駒込は遠くの地面を睨んだ。すると、巣鴨がランクルの重厚そうな鉄板をコツコツと叩きながら云う。

「まあ、良いじゃないか。この車はタイムの優遇措置受けられるし、なんせお前は長崎先輩と互角で争える技量を持ち合わせてるではないか。なっ?何も心配することはない。」

「心配?そんなん鼻っから無い。」

巣鴨はそう云われると笑みを浮かべた。

「云ったな。」

言葉を捨て、巣鴨は駆け足でその場を離れていった。「結局巣鴨までにも騙された」走り去ってゆく後ろ姿を見ながら駒込は悔しくとも、義務を遂行しねばならないという感情が沸いてきた。

・・・・・・・・・・・・・・
「「ゴオォォォ」」」

ランドクルーザーBJ46Vの3.4L、3Bエンジンの4気筒らしいドタドタといった加速の仕方だ。例えるならば巨鯨のようなBJ46は轟音を立てコーナー、モーグル(小)、坂を「ガラガラ、ドタドタ」と、音とは相応しくない快調さで越えてゆく。
重いトランスファーレバーを引く。車と彼の目の前に並ぶ関東ローム層の赤土のモーグルは、午後から降ってきた雨により少し滑りやすくなっていた。そこを轟音とともに、アクスルのバタつき易い40が「3点接地」を忠実に守り這行く。所々黒鉛を噴く場面もあったが、快調であることには間違えは無いだろう。
ヒルクライムでは一瞬、尻餅を起こすか否かな傾斜に見えたが、ミドル系列の中途半端さもあるのだろう。尻餅を起こさず目に見える煙ひとつ上げずに坂を登っていった。坂の上でT/Fをハイレンジに入れる。ある程度エンジンブレーキを利かしながら坂を下ると、遠くに水面が見えた。ストレートを全速力で突進した。一時的ではあるが、最高時速80km/hを越す。水面が次第に近づいてくると緩やかにタイヤをロックさせぬよう減速していく。

「「ズザァァ」」

池の辺に小さな波が押し寄せる。
40は先ほどとは打って変わってカタツムリのよう、とまでは行かないが、低速で池の対岸へ向かい走る。
池から一旦上がった40は車体の角から水が滴り落ちる。駒込は錆の事など頭に一切ないまま滴り落ちる水滴を振り切るように次のマッドステージへと車体を進めた。


『No,21番、護国高校、トヨタランドクルーザーBJ46V タイム、5分08秒。年代別車両優遇により結果からマイナス10秒引き、4分58秒!』

会場に放送が響く。そして一気に静まり返る。

「4分台...」

応急処置され、バンパーにガムテープが雁字搦めに巻かれた車の中でシートを倒しぼうっとしていた長崎が口を開ける。横から巣鴨が窓を叩く音がする。不機嫌そうな顔をしつつもすぐに窓を開けてやった。

「先輩。お気持ちは察せますが...少し様子見に行きませんか?」

一瞬長崎はためらう様な仕草を見せたが、礼も云わなければならないしもし車両に損傷があれば部長として考えなければいけないので行くことにした。


二人がゴール付近の車両点検用スペースに停めてある護国高校の紺色のランドクルーザーの周りに人が多くたむろしていた。その中から長崎は駒込を見つけ呼び止める。

「ほぼ優勝確定だな。おめでとう。そして何と云うか有難う...」

少し照れくさいようにも感じたし、恥ずかしいようにも感じた。

「しかしこれは一体何ごとだ?なぜこんなに人が車の後ろ側に回り込んでいる?」

車の方に視線を逸らす。

「実際回り込んだほうが話は早いです。まあ、こういった板金というか何と云うか、機械に強い長崎先輩や巣鴨なら分かると思います。」

云われた通り後ろに回り込むとマフラーが途中から無くなり直管状態になっている。マフラー周辺には煤のこべり付いた泥が付いていた。

「錆...?衝撃...?」

「錆、衝撃、どっちもです。」

水が多く混じっている泥を靴でこすりながら云った。

<休憩!>
休憩挟まないとやってけませんね!
今更って感じですが、名前を変更したい登場人物が結構います。
じゃあ、休憩終わり。

・・・・・・・・・・・

幌に大粒の雨が打ち付ける。水面にも大粒の雨が打ち付ける。それでも彼は我が校の名誉の為、ここで負けては先輩の面目に立たぬと進む事を止まない。

「モーグルじゃあまり良い走りはできなかったがここからがジープの本領だ。さあ行け!」

前後のアクスルが滑らかに地を這う。護国高校が所持している車両で唯一のターボエンジン、4DR5の音が大きくなる。車体は色が紺色なので泥はあまり目立っていないが幌まで泥が飛んでいるというのが分かる。
一気に減速をする。一旦スピードメーターを見、水面に侵入しても良い速度かを確かめる。車体が水に浸かり始めると徐々に加速する。車内には雨に打ち付けられたせいで濁った水が入ってくる。
池から上がると待っているのは泥濘地だ。道の途中には黒い煤の跡が付いている。そこから問題の岩の位置を察することができた。


「しかし、本当、駒込ってそういう所は凄いと云うか尊敬する。」

そう云い巣鴨は、靴に水が入らないようにとズボンとブーツの間に巻いていたテープを剥がす。

「まあでも、十分お前も技量はあると思うぞ。今回だってギリギリ枠に入らなかった感じじゃん。」

「そうかねぇ。」

スニーカーの踵を引き上げる。

「そう云えば聞いてなかったっけ?千早さんの事。」

「千早がなんだ?」

屈んでいる巣鴨を見下すような目線で云う。

「譲り受けてもらう車のこと。」

「ああ。あれか。」

「車種はジムニー1000、SJ40だと思う。聞いたところによると。」

駒込は険しい顔をした。

「なんだ?雲行の悪い顔して。」

「や、あの頃のスズキの4サイクルエンジンって当たり外れの差が激しいって聞いた事がある。バランスは良い車だそうだけど...」

「まあ、どっちみち林業所の車で酷使されているだろうし直さなきゃ使えないだろうな。」

「そうだな........まさかなー...。」

と云い腕を組む。

「何だまさかって?」

「何でもない。」

・・・・・・・・・・

「はぁ~、綺麗ですね。トロフィーって。」

由紀がトロフィーをまじまじと眺める。雨は止み、雲間からは黄金色の光が差し込む。

「でしょっ!」

千歳は満足気な笑顔を浮かべた。

「これから帰るんですよね。どれくらいかかるんですか?」

「家まで付くのにざっと二時間は見積もったほうが安心かな?」

千歳は苦笑いする。

「えっ?本当ですか?行きよりもかかる...」

甲高い声で咲が割り込む。

「咲は家遠いからね。大変だよね。」

「あー、家柄のせいで家がってパターンか。」

「はい。そのパターンです。」

溜息混じりに咲は云った。

「家まで送ろっか?私の家、門限ないし。」

「いやいや、そんなことしてもらわなくても結構ですよ。夕ご飯の買い物もしてかなくてはいけませんし。」

「いいよ。いいよ。咲ちゃんのお父さんにもお礼しなくちゃだし。」

「そうですか。ではお言葉に甘えさせて頂きます。」

咲は小さく礼をした。

その後、一年男子と長崎はランクルで。一年女子はジムニーで。駒込はジープで。巣鴨はランクルを載せたレンタルのトラックで東京へと戻った。

・・・・・・・・

「はーっ!林道とか走り慣れてる私でよかったね。じゃなければこんな道恐れて送るの辞める人もいるんじゃない?」

真っ暗な砂利道をゆっくりと登ってゆく。ナビは道を認識していない。千歳橋は一応、礼をする為に制服に身を包んでいる。

「何となく興奮しきった顔ですね。」

にっこり笑いながら云う。

「分かった?」

「分かりすよ~」

「咲ちゃんってまさかこの道を毎日のようにつかって登校するの?」

「そのまさかです。行きは自転車で一気に下って、帰りは山の麓まで自転車で行ってそこから近所の人につれていってもらったりするんです。自転車も一緒に。」

膝に抱えている袋の中の卵を見ながら云った。

「凄い。体力あるねー。自衛隊になれるんじゃない?そう言えば麓の駅って使わないの?」

「女性自衛官ってそんな重い銃とか持って訓練するんですかね?分かりませんけど。
 麓の駅は使いませんよ。親になるべく節約するよう云われていますし、高い割には自転車で行ける距離ですし。遅刻しそうになったときつかったことありますけどね。」

「偉いね。努力家だね。」

少し真剣な表情をする。

「努力家...?ですか?
...たまに云われます。でも、自分はそういう積もりではないんですがね。人から見るとそうらしいです。まあ、私の小生、短い間でも色々ありましたし。」

少し低いトーンで話す。

「咲ちゃんも今まで辛いことがあったんだろうね。でも大丈夫だよ。あなたなら。」

咲は一瞬今までの自分の事を全て知っている亡き母と会った様な不思議な感覚に襲われた。泣きたくとも泣けない。泣きそうだけど泣かない。泣いてはならない。唯唯、黙って助けを求めた。そんな頃のような。
暫く車窓に映る真っ暗な木々を見つめていた。すると、ぽつんと小さな光が見えた。そこが咲の家である。

「あそこ?咲ちゃんの家。」

元の明るいトーンで千歳は云った。その声でふと我に帰る。

「そうです。そこの曲がり角左です。」

「了解。」

「「バン」」「「バン」」

車から降りた二人の前には大きな和風建築の家が建っている。暗闇の中でも建物の輪郭だけは分かる。咲が先導し、ガラガラと横開きの扉を開ける。

「ただいまー!」

明るい声で帰りを告げる。お帰りと遠くで声がする。

「お父さん居るー?」

すると、半ズボンに肌着一枚着た13、4歳の少年が着た。

「父さんならまだ事務所にいるよ。」

「そう。あっ。、優君また制服干してないでしょ!服装から予想つくんだからね。」

「悪い悪い。」

そう云い残したまま自分の部屋へ戻っていった。

「弟さん?」

「そうです。済みませんね。あんな格好で。後で注意しておきます。」

「咲ちゃんに何となく似てるような気がする。」

「えっ?」

少し顔が赤くなる。

「あーもー、上がってください。事務所中から行ったほうが速いので。」

早口になる。
薄暗い廊下を歩いてゆくと、如何にも増築した感じが漂うところに扉があり、咲はその扉をノックし開けた。

「お父さん。ちょっと...」

「ん?何だ?帰ってたのか。」

そう云うと、パソコンの画面と睨めっこしていたのを辞め咲の方へ行った。千歳の方を見ると、

「メールで云ってた先輩?」

と、咲に向けて云った。

「そう。部活の先輩。お礼が云いたいんだって。」

「そうか。」

「えっと、突然済みません。この度はお車を譲りいただくという事でお礼を云わさせて貰いに来ました。ほんのつまらない物ですが、部からの気持ちです。」

礼をすると、千歳は紙袋を手渡した。

「わざわざ悪いね。有難う。こっちからも何かしら出さないとなぁ。」

「いえいえ。結構ですよ...ただ少しお願いがあるのですが____


壁に取ってつけたようなスイッチを押すと蛍光灯が2、3回点滅しながら車庫と千歳橋と咲の父を照らした。

「この白い車なんだけどさ、もう余り役目は無いかなって思ってたところなんだよ。」

車庫に古いトラックと一緒に佇むその四輪駆動車は艶は無く、少し砂埃をかぶり、サイドシルやフェンダー、雨樋がやや腐食しているが実用車として使われていたとならば、かなり状態の良い個体だ。

「まだまだ使えそうな感じですね。」

千歳は車をまじまじと見つめながら云う。

「エンジンもちゃんと整備してたからまだ全然元気。」

そう云うと、ポケットから鍵を取り出しドアを開けてエンジンをかけた。全く異常のない音で、スズキ製エンジンらしい乾いた音を響かせる。

「乗る?」

「良いんですか?ではお言葉に甘えて。」

そう云うと、スカートを抑えながら車に乗り込みサイドミラーなどの調整をした後、少しエンジンを吹かした。NAエンジンらしい滑らかで比較的静かに4000回転まで回った。千歳が窓から顔を出す。

「まだまだいくらでも走れそうな車ですね。」

「そうだな。どこでもいけそうだな。どこでも活躍できそうだな___あのさ、こっちからもお願いがある____咲は今まで辛い経験を色々してきてしまったからさ、あの子が新しい世界に入って馴染めなくて落ち込んだりしていたら、その時はよろしく頼むよ___」

「はい。分かりました。」

咲の父の目を見、気丈に頷いた。


あとがき
毎度、有難うございます。かなり間が空きましたが、その間に各登場人物の性格や関係等を煮詰めることが出来ました。また文章も掲載当初よりは遥かにマシになっていると思います。
実は最後らへんはあまり長くするつもりではなかったのですが、この後の展開上、必要不可欠な場面だったので長くなってしまいました。
これからもっと掲載の間が空いてしまうと思いますが、ご了承下さい。極力期待は裏切らないようにしますので...


えっ?期待なんてしてないって??もっと頑張ります。



2016年6月14日火曜日

【試作小説】次は四駆と何処に行く?part4 <第二章・小型と中型 中編 篇>

<中編>

他校の車両が泥濘地スタックし、走行不能状態に陥ったため、棄権をし引き上げ作業を行っている。そんな情報が千登世の乗るシエラの無線に入ったのは走順が回ってきた時だった。


「千早、無線頼む。カメラは切ってていいから俺はとりあえず引き上げ作業の手伝いをするから。」

そう言って、咲にカメラと無線機の必要性、扱い方、出場車両の説明をしていた駒込は無線機を投げ渡し、駆け足で沈みかけた車体の方へ向かった。

「「えっと駒込先輩から千早に無線機替わりました。」」

「「分かった。今のところ車体ってどれくらい沈んでる?」」

悪い音質でとても聞き取りにくい。しかも脱出作業でエンジンが呻いている最中という事が更に双方に聞き取り辛さを与えている。そんな中でもしっかりと受け答えはできている。

「「えっとタイヤの半分以上は埋まってます。ドアの下の部分までは埋まってないですけど...」」

「「そっか、分かった。ありがとう。」」

落ち着いた様子でそう言った後、無線は切れた。
しかし、千歳はかなり焦っていた。というのも、前走者は自分の運転する車と同じ、小型車クラスでは重量のある方のジムニーシエラだったのである。さて、同じ車で通れるのか、轍は仮補修的に埋められるとしても路面状況の下見したほうが良いのではないか。しかしそんな時間はない。では何をすれば良いか。さっきも状況を伝えてもらたが、いくら情報を集めたって、百聞は一見に叱らずと言うではないか...結局最終的に選んだのは自分の目と腕を信じる他になかった。しかし、疑心暗鬼であることには間違えなく、正直まだ心の整理は終わってはいない。
自分は心の整理ができていると思い込ませ終わったあと、丁度無線が入って、路面の仮埋めも終わり、競技再開の報告が入ってきた。

「とりあえず完走することを目指しましょう。」

そう駆け寄って言ったのは由紀だった。

「うん」

「そう言えば、大塚先輩からの伝言なんですけど、相手はオートマだった少し訳が違うので安心してくださいとか言ってましたけど...何の役に立つんです?」

「えっ!?それホント!少し肩の荷は降りた気がする。ありがとう。」

「私にはちょっとわからないですけど、まあ、お役に立てたということで...どういたしましてです...」

由紀は少し困ったような顔をしてそう言い、もうすぐ走り出すということもあって、自分の持ち場へ帰っていった。

これは行ける。と千歳は確信した。そして切ってあったエンジンを再びスタートさせ、ニュートラルから二速にポジションを入れ、信号機が赤から青になるまで待った。

ド、レ、ミの音の「ミ」が鳴った瞬間信号は青に変わり、それと同時にエンジンの回転数が上がる音がし、タイヤが地面を蹴り上げる。車体は後方に傾いたが、回転が安定すると共に安定した姿勢を取り戻した。
ストレート、カーブ、モーグルをしなやかに突破してゆく。
大モーグル手前の副変速機切り替え区間で一時停止し、4WD-Hから4WD-Lにボタンを切り替える。これによって最大約40倍減速を手に入れることができる。
勿論最大減速を手に入れられる一速を使いモーグルへ入ってゆく。エンジン音よりもギアボックスからの音が上回る。脚はコイルスプリングらしくしなやかに動き、タイヤの性能が良いという理由もあるがストロークの範囲内ならしっかりと接地してくれる。小型車では姿勢はかなり安定したほうだ。
しかし、パワーについては最大40倍減速では足りないこともある。そこはクラッチの名手と言われるだけあり、千歳は半クラッチを上手く使いモーグルを切り抜けた。
その後、ヒルクライムを抜けた後の第二副変速機切り替え区間までは二速、三速を使い、ハイギヤードな恩恵も受け、最高タイムを記録した。トランスファーを高速に切り替えたあとも順調に車を進める。

・・・・・・

「あっ。来ましたよ。」

マッドエリア地点にて、咲は200mの池を渡り終えて、車体の隅から水が滴り落ちる、こちらを目指してくるシエラを指さしながら駒込に言った。

「フーン。文化祭で使うらしいからちゃんと撮っとけー。」

先ほどの救出で疲れたからと言い、咲にサービスエリアまで取りに行かせた椅子に座り、SNSでもやっているのだろう、スマホの画面に集中しながら無愛想に返答した。その様子を見て当然の如く嫌気がさした咲は

「私、何か気に食わないことでもしましたか?もしそうだとしたらちゃんと直しますけど。」

と、優しく投げかけた。すると、顔をこちらに向け、横目で咲を少し見て答えた。

「そんな事はない。後輩はあまり得意でないだけだ。それよりもカメラに集中しろ。」

「そうですか。ならいいです。それが先輩の性格なのでしょうし。」

先ほどとは違い、ドライな感じに応えた。
この時、咲は心底駒込を嫌った。カメラなんてさっさと切って、この場を離れて由紀にのもとに行きたいものだった。しかしこれは今、先輩の為、部活動のために撮ってと言われ撮っているいるものである。わざわざこんなクソ人間の為に自分が約束を破るというのは我が身が許さない。そして、もうそんなことは考えないで、カメラの小さな画面に集中した。

「ブロロ...

泥を巻き上げ、速度を落とさないよう走ってゆく。後ろ姿は砂埃や泥が付いて、ナンバープレートまでもが見えない状態にある。心配されていた轍も、意外というべきか、問題はなかった。

マッドステージを抜けた泥と埃まみれのジムニーシエラは500mのカーブを全力で走り抜け、ゴールへとたどり着いた。
タイムは何と5分13秒21!現時点では1位だ。ゴール地点で待っていた長崎と、1年男子部員2名は喜んでいたが、そのタイムを叩き出した由紀には一つ気がかりなことがあった。

       よねだか
『No,7 米鷹女子大学附属高等学校 スズキサムライSJ413 運転手は英山那都選手です。』

アナウンスが流れる。それに気づいた長崎が

「嘘だろ!なんでバカデカいアメ車しか扱わないあの強豪高校が小型車枠に...小型車枠を殺しにかかってるのか?つーか逆輸入車ってありかよ。」

と驚く。

「逆輸入車がいけないなんてルールはないわ。因みにあのサムライは元々日本の工場で造られたものだから逆輸入じゃなくて出戻りって言ったほうが正しいんじゃないかな。というか、それ以前にエントリー表ちゃんと見たの?」

真剣な顔をして長崎に問い掛ける。

「いや、自分の位置を確認したくらい...」

「よくそんなんで部長務まるわね。逆にあなたを尊敬してしまうわ。」

「同級生にはきついよな。お前って。」

「いや、別にそんなことはないって。そもそもあんたがしっかりしていないのが悪いのよ。それよりも早く車をサービスパークに持ってて。ハイ、これ鍵。」

鍵を投げ渡す。

「ハイハイ。分かりましたよ。済みませんでしたと。んで、とりあえず走ってアジアラリーの切符をとればいいんでしょ。分かりました分かりました。簡単なことですねぇ~。」

「いきなりどうしたの?やけくそは一番良くないわよ。」

「そうだね。ゴメン、ちょっと緊張からかわからないけれど狂ってみたかっただけ。あと朝早かったから疲れてる。」

「そっかー。じゃあサービスパークのクーラーボックスに私が飲む予定だったエナジードリンクあるからそれ飲んでから行きな。私からの奢り。」

「サンキューです。」

大丈夫かな、長崎...そんなことを思いながら、1年男子を引き受け、泥と埃まみれのシエラの後ろ姿を見送った。

・・・・・・

「いやーあの走り方は違うでしょ。」

小声でそんなことをつぶやいているのは巣鴨だった。
彼がなぜそのように思うのかというのは、サムライの走り方ではない、這う走りをしていたからである。「これは絶対大した結果は出ない」と確信した巣鴨は見ててもさして面白くないのでサービスパークに戻る事にした。

「戻りましたー」

サービスパークに戻ると、洗車場で長崎と由紀がシエラを洗っていた。

「おっ!ちょっと手伝って。早く本部に行きたいから。」

巣鴨に気づいた長崎が呼び止める。

「分かりました。」

「そうだ、米鷹のサムライってやっぱり強い?」

急に話し掛けてくる。

「言っちゃ悪いですけど扱い方を間違えてます。なので多分大した結果は出ないと思いますよ。」

「そっかー。ある国の車種に固着している学校って例え強くてもそういうこともあるんだろうね。」

「そうですね。でも日本車は固着してもそういうことはまず起き難いのが利点だったりしますよね。」

「なかなか上手いこと言うね。」

感心した様子で言った。

「とりあえず後ろは終わりましたよ。」

由紀が報告する。

「こっちも終わりました。」

巣鴨も続く。長崎も丁度終わったところだった。そこで気づく。

「そうだ、巣鴨って飯担当だよね。もうその時間じゃない?」

長崎が時計を見て思い出したように言う。それについて巣鴨は、

「そうですね。でも僕、料理できませんし...と言うか今の2,3年で料理マトモに作れる人っていませんよね。基本ウチの学校は食料はご飯を炊くのが専門って割り振りで決まっていますし。」

「白米だけっていうのもねぇ。この部活ってホント不思議だよね。で、そんなのよりも大切な材料はどんな感じなの?」

「貯蓄庫にあった一ヶ月賞味期限が切れたカレーのルーと近所の人からもらった人参とかの具を持ってきました。まだランクルに積んであります。」

「あっ!先輩。咲なら料理かなり上手ですよ。」

突然京子が口を挟む。

「やっぱそうなんだ。なんか見かけ通りだな。じゃあ今のうちに呼んで作ってもらったほうがいいね。」

「でも千早さん、撮影に回っているじゃないですか。」

「別に俺のを撮ったって意味ないでしょ。もう俺よりも運転の上手い千歳の撮ってるんだし。だからもういいって無線で連絡して。」

「あー、はい。分かりました。」

巣鴨は早速ランクルに乗り込み、無線機で千早と、ついでと言ったところか、駒込も戻るよう伝えた。
数分後、咲は折りたたみ式の椅子を肩に抱え、片手には三脚に付けられたままのカメラを持ちながら駒込と一緒に帰ってきた。それを見た巣鴨が、

「お前、後輩にそんな荷物持たせといて自分は何も持たないっていうのはないだろ。しかも相手は女子だぞ!どうせお前みたいな奴は自分から持てと頼んだんだろ。ホントクズだな。」

と、怒鳴る。それに対し、駒込は「ハイハイ」と言うだけだった。その態度をみて巣鴨は彼の顔面を一発殴りたいと思った。

「巣鴨先輩。別にそれは頼まれてそれを承諾したのは私ですし大丈夫です。あんまり感情的にならないで下さい。」

咲のその言葉で仕方なく殴りたいという気持ちを腹の底に沈め、昼食づくりを自分も手伝う事にした。

その様子を見つつも、車体の最終点検をしていた長崎が、

「じゃあ、行ってくる。くれぐれも喧嘩のないように。安全第一で。火を扱う人もいるわけだし。」

言葉を区切れ区切れに長崎が車の窓から顔を出して言う。

「了解です。先輩も学校のためによろしく願います。」

言葉で返す代わりに親指を立てて了解する。直後に長崎の操る水滴の残るジムニーシエラは本部近くのスタート地点に向かって、ゆっくりと車を進めていった...

・・・・・・

‘‘千歳が1位に入ったとしても、それでアジアラリーに参加できると確定したわけではない。これを最後の戦いにさせるわけにはいけない!’’

よく「能天気、単純、それなのに何で頭いい?先の見通しが本当に付いているのか?」と言われる長崎もこの時ばかりは緊張していた...

「ブロロロ...

アクセルを強く踏み込むと同時にジムニーシエラは砂埃を巻き上げ200mのストレートを軽快に走り出した。

あとがき
まさかの「中編」で投稿です。後半としてこの試合の話を終わらせるつもりだったのですが、色々とこのあとの話の展開の事を考えると、第2章は大切な章になってきて...とりあえず後編で第2章の話は終わる筈です。
そう言えば、この回で徐々にキャラが固定されてきました。自分的にはそれができて一安心です。

それでは有難うございました。                 
次回も読んでくれる人がいたら嬉しいですね...

2016年5月25日水曜日

【試作小説】次は四駆と何処に行く?part3 <第二章・小型と中型 前編 篇>


<第二章前編>

「ガァーー」」
 「ガー」」
  「カァー」」」

午前8時、

紺色ベースの色に塗られた三台の車が第5回、春季四輪駆動車運転技術関東大会兼夏期アジア4WDラリー予選会場に入り込んでゆく。

最初に入ってきたのが、スズキジムニーシエラJB43W H25年式、銀と紺のツートンカラーだ。護国高校の車両の中では、一番年式が新しく、小排気量の車だ。

続いて、トヨタランドクルーザーBJ46Vが低く乾いたディーゼル音を鳴らしながら、会場に入り込んでゆく。屋根が白いのが特徴だ。この車両は、最初に入場したシエラとは全く逆で、年式は一番古く、排気量は最大である。

最後に入ってきた車は、三菱ジープJ55。先に紹介した2台とは中間的な存在である。年式も、車格も、排気量も...ランクルと同じく、ディーゼルエンジンを積んでいる。


「ウウ~ 意外と早く着いたわね」
副部長の千歳がシエラから降り、背伸びをしながらそんな事を言う。
対して部長の長崎は何も喋らない。と言うよりも、彼は喋る気にはならなかったのである。約一時間半、あまり話したことのない女子に囲まれながら運転していたのである。朝5時起きの彼にはそれはとても辛かったのだ。

一年の大塚と要も部長の長崎と同じような状況に置かれていた。そう、ランクルの轟音を初めて聞いたからである。その為、二人は少しの間、愚痴をこぼしていた。


会場には、もう既に、開催者側が本部やサービスパークの準備を整えており、後は車体のコンディションを整えるだけで良い状態になっている。
護国高校のサービスパークは普通の大きさである。多くの車両を所有する強豪校は更に大きい。ただ、そのような高校は希で、普通は2~5台程度を所有するのが普通である。

今回参加する高校の数は15校。その中でも護国高校は弱くもなく、強くもない、中間に位置する高校だ。


「わ~!凄く広い会場ですね。千歳先輩!」

シエラから降りてきた咲がそういう。

「そうね。私が1年だった頃はもっと少なかったけど、今はとっても賑やかだわ。」

「これからもっと賑やかになると良いですね。」

「でもあんまり多くなりすぎるのも良くないけどね。」

「確かに、色々と運営とかが大変になりますものね。」



・・・・・・

『これから春季四輪駆動車運転技術関東大会兼夏期アジア4WDラリー予選、開会式を始める。全員起立!礼!』

『代表挨拶。 落合茂雄代表、よろしくお願いします』」」...



以下、面倒なので割愛!

・・・・・・


「マジで代表の話長かったわ...」

開会式終了後、皆でサービスパークに戻る途中、由紀が呟く。

「まあ、しょうがないよ。おじさんおばさんていうのはこういう場になるとついつい話が長くなってしまういきものなんだよ。」

「そーいう割り切りができる咲っていいよね。」

「まあ、ね...」

「そう言えば一年今日なにすんの?」

「応援でしょ」

「応援だけなの?」

「他に何かすることある?」

「確かに...なんか、暇そうだな。」

「私をこの部に誘った本人が言う?」

「う、うん。まあ、良いよ。きっと良い一日になるから!」

「そうだね」

そんな事を言いつつ、サービスパークに戻ると、既に2、3年は車両の点検、調整、コースの確認を始めた。


コースは毎年異なるが、基本的にフラットダート、モーグル、マッド、岩場、ヒルクライム、ヒルダウンがあり、走行距離は約3キロメートルで年によって異なるため、3分間で走りきれるコースもあれば、10分間で走り切るコースもある。
今回は、スタート直後、200メートルの直線が待ち受けており、第一カーブ300m、小モーグル700m、大モーグル300m、ヒルクライム15m(前半25度、後半30度)、緩やかな下りカーブ85m、ストレート400m、池200m、マッド300m、カーブ500m、を経てゴールに辿り着ける。

ルールとして、走行中に車両が故障し、走行不能に陥った場合失格となる。また、横転した場合は近くの観客総出で起き上がらせるのが伝統だ。

車両は、エンジンオイルやデフオイル、ホイール、タイヤなどの消耗品以外の改造は許されておらず、純正状態ではなくてはならない。しかし、強度のある牽引フックに付け替えることは許されている。(というのも、もしスタックして牽引フックが壊れ、脱出作業に多くの手間が掛かり試合の運営に支障がきたしてはいけないからである。)
また、各車両によってクラス分けされており、1500cc未満が小型、1500cc以上で小型車枠に入るものは中型、同じく1500cc以上で大型車枠に入ると大型となる。なので、護国高校の保有車両で大型車クラスに出場できない。実に特殊な区分けである。同じ車でもグレードによって区分けが異なることだってあり得るのだ。

・・・・・・

会場にアナウンスが流れる。

『え~では、小型車、及び、軽自動車部門を始めます。参加する選手は本部前のスタート地点に走順に並んできてください。』

「あれ、俺ゴール地点で待っていたほうがいい?」

長崎が千歳に訊く。

「そうしといて。お願い。」

「バン」」

ボンネットに「No、6 護国」と書かれたゼッケンが付けられたシエラに千歳がヘルメットをかぶり乗り込む。
キーを差し込むと先ず甲高いセル、フライホイールの音が鳴り、戦いの始まりを告げた。
二速にポジションを合わせ、徐行でサービスパークからスタート地点へ向かう。それに続いて1年と、総順が後の方の部員は観客席の方に移動した。

スタート地点には先に走る車が既に並んでおり、千歳が操るシエラが到着した時点では5台が先に並んでいたが、最終的には7台の車が出場となった。また、同じ車を2名まで運転することができるので、実際にはもっと走るのである。

......


「ブロロロー」

今大会初めてスタートを切ったのはブリキのおもちゃのような形をした1000ccのジープ型四駆だ。(因みに幌)

『No,1 湯島高校 ダイハツタフトで、運転手は西島拓選手です。』

会場にアナウンスが流れる。

錆は多少あるものの、艶と性能は失っていないその車は小モーグルまでは快調そのもの。しかし問題は大きいモーグルからだった。
大モーグルの前で一時停止し、トランスファーをローレンジに入れる。停止している時間はタイムに入らない。
如何にも低いギアで走行しているような音を立て、モーグルに入ってゆく。
脚の伸びは完全に不足しているので、少し止まったりする。ただ、それを避けようとして無理に突っ込むと殆どの場合故障し、即失格となるのでそれはできない。
しかしタフトは軽量である為、重量級とは物が違う。たとえ止まったってそれきりではない。踏み込んでやればクリア出来るのだ。しかし、タイムロスであることには間違えない。

そして、ここでタフトの本当の欠点が浮き彫りになる。

「バコバコ...」

明らかに岩に鉄板が当たって凹む音だ。腹下の処理が上手くされていない車はこうなる。最悪の場合は走行不能になることだってありえることだ。しかし今の大会は長距離を走るものではないため、さして問題はなかった。

その後、ヒルクライムまではローレンジで行き、その後ハイレンジのみの走行となった。

結果は5分34秒21

それに続いて、スズキジムニーJA11、SJ30、スズキジムニーシエラJB31、ダイハツタフトF10等が走り、記録は次第に塗り替えられ、5分20秒を切る者もいた...


あとがき
やっとのことで車が動き始めました。
書き始めて分かりましたが、目茶苦茶難しいです。というのも、クロカンという「三次元スポーツ」を二次元の「文章」に表すものですし、登場人物は勿論、車両の特性に合わせて物語の構成も合わせなければいけません。特に考えるのは路面状況と、車両の状態で、どう表せば読んでくださっている人が想像しやすいかとか考え込むわけです。少し専門知識というか、その車を知らない人でないと分かってくれないような出来事も起きますが、後々、ピクシブに投稿する際はもう少しマイルドにしておくので、安心してください。何時になるかは全くわかりませんが...
とりあえず、終わるかどうかの気配さえも見えないこの話ですが、末永くお付き合いしてくれる人が居ることを願うばかりです。

☆今回登場した車。
             スズキジムニーシエラJB43W


トヨタランドクルーザーBJ46V

三菱ジープJ55



ダイハツタフトF10



以上、こんな感じです。それでは、有難うございました。後半も宜しくお願いします。

2016年4月25日月曜日

【試作小説】次は四駆と何処に行く?part2 <第一章・集合! 篇>

「「これから、自己紹介及び、部活についての説明を始めます。気をつけ、礼!」」


・・・・・・・・・・・・・・

第1章 ~集合!~


「え~、それでは、新入部員の4名は自己紹介をお願いします。順番は自分たちで決めてください。」

葉桜の散る中、西側の倉庫兼部室で自己紹介が行われた。倉庫には車が三台停まっおり、あと二台くらい入るスペースはある。片隅にはホワイトボードやロッカー、会議用テーブル、パイプ椅子等があり、そこに皆集まった。司会は顧問の高松勉(公民を担当)によって進められた。因みに、クロカンを趣味としている為、監督も兼ねている。

「名前順でいいですよね...」

真面目そうな男子がそう言った。勿論3人は頷いた。
自己紹介が始まる。

「1-Aの椎名 由紀といいます。」

その場で立ち上がった。

「この部に入ろうとした理由は、単に知らない分野だったので、知ってみようとした好奇心からです。あまり物事を考えずに行動してしまうタイプなので、迷惑をかけることもあるかもしれませんが、宜しくお願いします。」

なかなか落ち着いた様子だ。 拍手が起こる。

「次ー」

高松が言う

「えぇ、、大塚友和と申します。クラスは1-Cで、ラリーが好きで入りました。特にパリダカです。救護部に関係することと言うと、一応、A型テントを張れるくらいの能力はあります。足を引っ張るかもしれませんが、よろしくお願いします。」

「次ー」

「初めまして、この度救護部に入部させていただいた、要 敬太郎と申します。」

【THE 真面目】 と言える話し方だ。

「僕自身、人のために物事を尽くすのを徳としていまして、この部は正に自分にとって最適な部だとと思い入部させていただきました。自動車については分かりませんが、これから学んで行きたいと思います。先輩方に信頼される存在になるよう、精進していきます。」

「真面目すぎて怖い」、そう咲は少し思っていたが、それよりも自己紹介をするという緊張の方が勝って少し震えていた。

「次ー」

先ほどと全く同じトーンで言った。あだ名が「カセット」なのはそれが由来だ。

胸を当てて鼓動の高い心臓を確かめ...

「え、ええと、、1-Cの千早咲と言います。この部活に入った理由は、第一に、椎名さんに誘われた、というのもありますが、、父が職業の関係でよく車で山を登るのを一緒に連れて行かされたとうのもあります。そうでなければこんな部になんか入っていません。」

少し笑いが起こった。おしとやかな少女が暴言を吐いたからである。

「あ、済みません><;」

焦る

「だからといってサボるとかそういうことはしないので... 済みません!終わります!」

焦って座った。紹介する前よりもさらに心臓の鼓動が高くなっていた。

「それでは、新入部員の紹介を終えたので、2、3年生の自己紹介をお願いします。まず部長さんから。」

「部長の長崎修です。分からないことがあったらなんでも質問してください。出来るだけ応えていきますので。宜しくお願いします。」

背の高く、スラっとした体型の爽やかな人だ。

「次ー、副部」

「ハイ」

眼鏡をかけた如何にも面倒見の良さそうな女性が立ち上がった。

「初めまして、千歳 柚といいます。今回、四名の部員が入ってくれてとても嬉しいです。運転とテント設営が得意です。1年生の人たちとはあまり長く一緒にはいられないけど、教えれることは教えていくので、皆さんもついてこれるよう頑張ってください。」

「次、二年の運転手から」

「初めまして、巣鴨英です。」

背が少し低い男子生徒だ。

「ここで言うのも、難ですが、昨年度の大会で、自車両をスタックさせてしまい、もう少しでアジアラリーに参加できたところを、できなくさせてしまった張本人です。」

低い声にこのような話だから空気が重くなってしまった。
それに危ないと感じた巣鴨は、

「まぁ、そのようなことがあるからこそ楽しいのであって、学べる事が沢山あるのだと思います。」

「見事な切り抜け方だ。偉い。」

部長の長崎が言う。

「やめてくださいよ~、そいういの」

照れくさそうに言う。

[部長] 「でもっ

「ハイハイ、とっとと進むよ。ツギー」

......この時、全部員が思った。コイツが本当の「KY」なのだと.........。



「一番タイミングの悪い時に発表か...」

そう溜息混じりに喋りながら立ったのは、駒込正、数学が得意な高2だ。この部に入ろうとした理由は単にテントを組み立てたかっただけであるらしい。

......


「ハイ、じゃあ、各個人の自己紹介が終わったので、部長さんと副部長さん、この部についての説明を...」

そう言われた二人はプリントを持ち前へ出てきた。

部長が話し出す。

「この部は、まあ、名前の通り、災害が起きたとき救護、救助をする訳。だけど、それだけじゃ部活が成り立たないから、災害救助士の特権みたいのもので、そこに三台の車があるけど、四駆って言うんだけど、あんな車が高校生から運転できるから、その車でラリー(大会)に参加します。勿論災害が起きたときは例え大会行われている最中でも、すぐに食料とかの荷物を詰め込んで割り振られた被災地に向かって炊き出しとかをします。もし海外に滞在している場合は、その国から食料を集めて帰国して送ったりします。」

今度は副部長からの説明だ。

「ただ、そうするにはさっきも言ったけど、災害救助士っていう資格が必要だから、まず最初に資格を取ってもらう。あ、でも、大体、早くて一ヶ月位にで取れる筈だと思うから大丈夫。長くても二ヶ月行くか行かないかな...人口蘇生やテントの張り方は、私達が教えるから、その教えたことを自分なりに報告書にまとめて、新宿の本部に送ればOKだから。自動車免許については合宿でとって貰おうと思うわ。単位は免除してもらえるから安心しといて。」

「あと、そもそも、災害救助士っていうのは...」」

部長が補足を加える。

「災害が起きた時本当にあったことなんでけど、野営料理とかそういう知識が無く逆に迷惑をかけに行ったボランティアや、売名行為で救援をする企業や団体が出てきたんだ。だからこの資格が作られたわけだから、そこはしっかり責任を持ってもらいたいと思う。いや、持て。ここは敢えて厳しく言うぞ。人の命が関わってくるからな。
  返事!」

「はい。」

少し、間があいたあと、副部の千歳が全員プリントを配る。

「えっと、23日に関東地区の春季大会があるので群馬に行きます。なので、このプリントは親に渡しておいてください。」

「あ、済みません。」

要 敬太郎が手を挙げる。

「これって一年も参加しますか?」

「もちろんです。見学ということで、どのようなことをやっているのかをよく見ててください。」

「わかりました。有難うございます。」

「他に質問は…」

「はい。」

「大塚くんどうぞ」

「車が三台しかないんですけど...確か一台の車につき運転手とナビゲーター2名でしたよね?そうすると車が1台足りないのですが、どうするんですか?」

「あ、それについては大丈夫です。」

今まで答えてきた部長に変わって、顧問の高松が答える。

「今まで貯めた部費で購入するので、安心してください。ナンバーも救助師用のナンバーに変えてあるので。」

「分かりました。有難うございます。」

この時、少し何か言いたそうにしている千早に気付いた飯田は、

「ハイ!千早さんが何か言いたそうにしています!」

「ええ!?」

勿論のこと彼女は驚いた。だた、言いたいことがあったのには間違えはない。

「えっと、、実は父に救助部に入るといった時に、車を貰って良いとの話で...決まっていたのですが...」

「じゃあ、譲ってくれるのでしたらそれが良いですね。」

「因みに車種はなんですか?」

「確かスズキのジムニーっていう車です。」

千早咲は、これから壮絶な戦いが待ち受けることを知らずに答えた...



続く。


あとがき?

今回、第三者の視点から書いてみた訳ですが、各キャラの特徴を設定しきれていないというのも有り、前回よりもまとまりのない文章になってしまいました。難しいですね。文を書くというのは。完結したら、訂正を加えてピクシブにでも投稿しようと思います。というか、この調子だと全く終わりそうな気配がせん(;´Д`)

最後に、主人公の千早さんと飯田さんが乗る車の写真をどうぞ。(拾い物ですが。前回は、幌仕様の写真でしたが、今回は幌に加えてバンも。多分この話に登場するのはバンだと思います。

それでは、こんなストーリー性の薄い「コバナシ」を読んでくださりありがとうございました。
次回も読んでくださるという方は勇者ですね。

2016年4月22日金曜日

【試作小説】次は四駆と何処へ行く?part1 <第零章・始まりの始まり 篇>

「パタン」」

ドアを閉める

「シュルル...カチッ」

リートベルト締め、

「カチッ」

キーを回す…

「ファ、ブファァァ」」」
小さな1000ccのエンジンを載せた車は乾いた音を奏で、少女の手によって7日間の旅の始まりへと向かった...

......

偏差値も良い方だし、評判も良い高校だから。それと、都民なんだから都立に行かなきゃおかしい!
とのことで、都立護国高校に入学した千早咲は驚いていた。

『え?なんで。入ろうとしたバスケ部が無くなっている...ただでさえ私の住んでいる場所から学校まで遠いというのに街のスポーツクラブにでも入れとでも言っているの?』

彼女はそう昼休みに部活動一覧表を見ながら考え込んでいた。
(因みに彼女は登校時間が一番かかる生徒だ。何故かって?家が都で唯一の村にあるのだ!)
そんな彼女に

「ねえ?咲は部活何にする?」

幼馴染でもあり、中学時代同じバスケ部だった椎名 由紀は声を掛けた。

「わかんない私。由紀ちゃんはどうするの?」

「ま、そこまで深くは考えてないよ。そこにある「救護部」って言うのは興味あるけど。」

「コレ、救護委員会とかの間違えで、印刷ミスとかじゃないの?」

「え?違うよ。まさか知らないの?なんか、5年前にできた資格で、救済ナントカ資格ってあるじゃない。あれって〈ヨンク〉とかいうの限定で自動車免許取れるのは知っているよね?」

「んん。」

「それを活用したものでさ、その〈ヨンク〉って車でアジアのどっかの国とか北海道で走らせるわけ。」

「アジアって... 北海道もアジアだよ。というか由紀ちゃん結構深く考えてるよね。」

「ふふっ」

照れるように由紀は笑った。それを察した咲は、

「それで、由紀ちゃんはその救護部に入りたいの?」

「まあ、、、ねっ...」

「そっか... 私は帰宅部でいいかな。家遠いし。」

すると、由紀は思いっきり、

「ねえ、私と一緒に入ってくれない?お願い!!」

と怒鳴った(?)
流石にいきなりだったのでたじろいだ。
気を取り直し、

「嫌」

と言うと、今度は嫌な目線をし、こう言った。

「アナタ、この学校で同じ中学校だったの私しかいないわよね。咲みたいな性格でこの学校に打ち解けていけるつもり?もし、入らなかったら咲とは相手しないわよフフフ...」

核心を突かれてしまった。そう、咲自身、実はそれが一番心配だったことで実は中学校時代の咲と由紀以外の生徒は皆、隣の県の高校、もしくは親の仕事の後継をしている。その為、由紀は咲にとってある意味生命線なのである。でも、流石に縁を切られることはないだろうと思ったが、良く考えなくても、彼女は途轍もなく頑固なのである。
もうここまで来たら、こう答えるしかない。

「わかった。入るよ。」

「やったー!咲が入ってくれた!」

ニコニコしながら小躍りする。実に分かりやすい性格だ。

「そういえば、私たち以外に女子部員いるの?」

「勿論!いるよ~。いなきゃ誘わないって」

「マネジャーとかいうオチはないよね」

「大丈夫だって!そんなことはないから。私が咲を騙したことなんてある?」

咲は「ある」と答えようとしたが、物心ついた時から由紀を扱ってきた彼女にとって、「ある」と答えたら、これ以上は危険な事はない(話がもっとクドく、長くなる。)との判断から発言はせず、首を横に振るだけに留まった。

・・・・・・

「とりあえず、入部届け、出そうか。」

「そうだね!」

......


倉庫の前には救護部部員8人の全員、集まった... 

参る!四駆道!?












あとがき?
今回、とりあえず試作品として作ったわけですが、その後のストーリー展開は出てくるのに、体力が追いつきません。というか、ずっとPCの画面を見るのが辛いです。喉もすぐ乾くし。なんか体が火照ってくるし...意味わかんないです。もう...

とりあえず、登場させようとしている車の写真でも載せましょっか。


①スズキジムニー1000 (SJ40)

                                      多分主人公が乗るであろう車です。

②三菱ジープJ37(J36)


          ディーゼルにするかガソリンにするかで迷っています。J38でも良いのですが...
                                    乗る人はこの後登場するということで。

③トヨタランドクルーザーBJ44V
やはりコイツが来なきゃ始まらない!

④スズキジムニーJB23W 
超小型RRとして活躍してもらおうと思います。


⑤三菱ジープJ55
                       ジムニーと同じ突撃型四駆として仲良く頑張ってもらいます。



ざっと挙げてみましたが、こんなもんですかね?他にもLRやRR、DF、チェロキー、ラングラーとかも出してみたいと思います。ラダ・ニーヴァやオースチンアントとかも出してやりたいものですね。
                    それでは、続くかどうかわかりませんが、ありがとうございました。













2016年1月24日日曜日

cc-01リアデフロックについて

さて、2016年になってからの初のブログ更新。なんの話題かというと、デフロックです。
まあ、このブログをご覧になっている方々はデフロックの何たるかくらいは分かりますよね。でも知らない人の為に簡単な説明を…わかっている人は「本題デフロック」まで飛ばしてください。

ディファレンシャルギア

まずこれから説明しないと始まらない。
ディファレンシャルギア(以下デフと略します)とは旋回時スムーズに回る時に必要なもの。例えばトラックの背後を見る。そうすると車体の裏の方に丸く飛び出したものが見える。そこがデフである。
構造としては下の図のようになる。

例えば右に曲がる際、最も抵抗が大きいのは右側のタイヤである。そこでデフは曲がりやすいように右側と左側のトルクを自然と適切に分けてくれるのである。簡単に言うと、抵抗の大きい方には力をあまりかけないようにする装置。もしデフが無いのだとしたら、トルクの配分は50:50。死ぬほど腕が疲れるだろう。これによって車は自在に街を走れるのである。

欠点

しかし、悪路ではそんな装置があるせいで前進後退ができなくなったりする。なぜかというと、デフには先ほど述べたように抵抗の大きい方向に力を振り分けを減らすという特性がある。フラットダートなら問題はないのだが、起伏のある地面、モーグルなどではただのお邪魔でしかない。右側の車輪が山に乗り上げたとしよう。そうすると右側の車輪には動力は伝わらず、左側だけにしか伝わらない。もしその山が低く左側の車輪がしっかりと接地していたならいいのだが、もしそうでない場合、左側の車輪は空転したままである。ただ、もし後輪側がしっかり接地していたのだとしたら望みはあるが大体そんな都合のいいことはない。車体も傾くので今度は右後ろが空転し始める。そうなったら対角スタックの出来上がり!分かりやすくすると下の図のようになる。
足の良く伸びるランドローバーやランクルならグリップが効くので良い。ジムニーやジープなどは軽量なので車体を揺さぶればグリップが回復したりする。ただ、それも限界があるのでその機能を殺すデフロックやLSDをつけるのである。LSDの説明は面倒くさくなるのでやめます。

本題デフロック

ん~で、前置きはここまで。デフロックを搭載したことで変わったことを言っていきたいと思う。
まず最初に、燃費が改善した。と、まあ、分かるだろうが、空転する場面があまりなくなったからである。そして何よりも走破性の向上である。(それを最初に持ってくるべきだろ)今まで行けなかった起伏を何の苦労なしに走破できるのである。これは凄い!リアだけでこれならフロントも…となるが、タイトコーナーブレーキング現象が起こるので組み込む気はない。比較にはなりにくいが、下の動画を見れば分かる筈だ。
オープンデフ時




デフロック時


大体これくらいの違いがある。比較動画としては余りよくないが、ちょっとした参考までに。

しかし

ただ、デフロックした状態とオープンデフ時だと後者の方が楽しいのである。これは最大の悩みである…まぁ、当分でフロックはしたままだと思うが…これからどうなる?CC-01!

粗悪な文で済みません。では、ブログの閲覧ありがとうございました。